中国メディアビジネス日記

中国のジャーナリズム学院、復旦大学新聞学院の元留学生が、中国ITやメディアビジネスをつらつら書きます

ビジネスモデルを急速に改善させる中国のBilibili、IPOへの道のりはどうなる?


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 BilibiliのアメリカでのIPOについて、『財経』の報道があったので、メモ代わりにブログにしてみます。上場を控えるBilibiliのマネタイズ状況は急激に改善しているようですが、その一方でリスクもあるようです。中国アニメと出版のエコシステムについては、今後まとまった形で記事にしていければな...と思っています。
 
原文
独家|B站最快2018年Q1赴美上市,估值超30亿美元
2018年01月11日 14:10  
 
IPOの時期、評価額の推定等
 
 BilibiliのIPO計画は2016年から始まっていた。17年10月のブルームバーグの報道によれば調達額は最低でも2億ドル、評価額は10億元を超えるだろうとみられており、30~35億元になるのではないかという意見もある。2018年中には上場するだろうとみられている。
 Bilibiliの最後の調達は2015年11月のDラウンドで、テンセントなどから5億元を調達している。
 
上場成功の鍵は版権問題
 
 著作権の厳しいアメリカにおいて、Bilibiliの海賊版への対処は明暗を分ける要素となる。
 アリババと傘下の動画サイトYoukuがアメリカで上場した時も同じく、Taobaoの偽物と版権が問題となったという。
 IPOの際には経営のリスクと解決策を明らかにすることと会計面の裏付けが必要となるが、特に今後の株式市場での継続的な成功を考えれば版権問題の徹底的な解決は必須であり、そうでなければ法的リスクにもなりかねない。
 実際、Bilibiliも2017年7月には海賊版問題の整理に乗り出している。大量の動画を削除したのだ。その中にはアメリカ、イギリス、日本等海外版権に関わる内容も含まれている。それ以外にも国産作品の海賊版の処理も進んでいる。
 しかし、過去に海賊版を含む大量の映像リソースで多くのユーザーを引き付けてきたBilibiliにとって、リソース減少はユーザー動員面でリスクになるという見方もある。
 特に中国最大のオタク文化コミュニティでもあるBilibiliは、他のサイトのように主導的に独自番組の制作をしなくてもユーザー自身がコンテンツを生産し続けてくれることでアクティブ度を保っていたからだ。
 
マネタイズの難題を乗り越える
 
 長期間に渡って、Bilibiliのマネタイズは進んでいなかった。動画サイトの基本的なマネタイズ方法である動画内広告をBilibiliはほとんど行っていないからだ。「無広告」こそがBilibiliと他の動画サイトを分ける重要な記号であり、過去に広告を導入した時にはユーザーの強烈な反対を受けている。
 以前は、Bilibiliの損失の大きな原因は版権の購入費用だった。2015年以降、Bilibiliは300を超える日本アニメの放映権を獲得している。iResearchの報告によればその購入量ははるかに規模の大きい動画サイトであるテンセントビデオやiQiyiをも超えている。
 コスト的には、アニメの購入は他の伝統的な動画サイトのドラマの購入に比べると低コストになり得るが、やはり大きな出費であることに変わりはない。
 
 注意すべきは、テンセントの公開情報によれば、2017年以降、Bilibiliの版権への出資額は減っているということだ。Bilibiliのコンテンツへのコストは2017年の最初4か月減少し続け、去年の12.8%から8.8%となっている。
 それと同時にBilibiliはゲームとライブ配信に力を入れ始める。データによれば2015年のBilibiliのゲーム代理販売と運営による収入は1億元のみだったが、2016年にその数字は5.24億円に達しており、その成長率は423%だ。そのうちBilibiliが代理販売する『FGOFate/Grand Order)』は5月に一度中国を代表するゲーム『王者荣耀』を超えてアップルストアのベストゲームとなった。
 
 Bilibiliは「課金による先行視聴」モデルを既に試し始めている。2017年12には、18年1月に手に入れた29の正式版のうち、8作品に先行視聴モデルを導入するという。
 ビジネスモデルの変化とマネタイズの加速はBilibiliの収益状況を改善させている。『財経』の理解によれば、Bilibiliは2017年には黒字化を達成しており、関係者によれば2018年にの利益予測は100%の増加となっている。
 
 現在、Bilibiliの主要な収入構成はゲームの運営とライブ配信、バナー広告である。テンセントの財務データによれば、Bilibiliの2017年1月から4月の合計収入は7292億元に達し、9854万元の黒字となった。そのうち、ゲーム運営と代理販売の収入は6.41億元で前年同期に比べ267%増となり、総収入における割合は95%を超えることになった。
 しかし、Bilibiliにとって、ビジネスモデルの核心をゲームやライブといった「副業」に置くこと、そして「本業」である動画のマネタイズが未だに見えていないことがウォール街にどう見られるかは分からない。
 
 最近、競合であるAcFunにも資本面での動きがある。
 『財経』の12月20日の報道では、アリババのジャックマーが参与する云锋基金が新たなラウンドの投資を試みている。
 AcFunはBilibiliよりも早期に成立したものの、現在ではユーザー数でもMAUでもBilibiliに遠く及ばない。しかし、Bilibiliに次ぐ二番手としてのブランド価値は十分にある。
 95後、00後の世代がインターネットの主流ユーザーになり、その踵腓能力を高めていく中で、彼らへの影響力の大きいAB2つのプラットフォームの価値に資本市場は注視している。