中国メディアビジネス日記

中国のジャーナリズム学院、復旦大学新聞学院の元留学生が、中国ITやメディアビジネスをつらつら書きます

中国ミレニアム世代の文化とは~講演会「チャイナ・ユースカルチャー」行ってきました

f:id:kikibrero:20171029232414j:plain

 

 中国特集が組まれている「フェスティバル/トーキョー」で、中国のミレニアム世代の文化を扱った講演会があったので行ってきました。『インディビジュアライゼーション:チャイナ・ユースカルチャーの流れ』というタイトルで、中国の若者の生態、ユースカルチャーを研究している組織「青年志(China Youthology)」の代表、張安定さんが講演しています。講演の内容をまとめてみました。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 改革開放以来大きく変化してきた中国社会。1980年以降の世代は皆、親世代と違う世界に生きているという前提のもと、個人のアイデンティティを強く意識して生きてきた。ただ、その意識はさらに「80後」「90後」「95~00後」で大きく異なる。

 

f:id:kikibrero:20171029232247j:plain

 

  80後は2桁成長を続ける社会で「頑張れば中流階級になれる」と希望を持って生きてきた。だが大人になって大気汚染や金融危機、就職困難といった「リスク社会」に向き合ったことで挫折を経験する。この世代はまだ「趣味を持っている人」も珍しく、皆で頑張ろうという集団意識も残っていた。例えるなら「ワンピース」。

 

f:id:kikibrero:20171029232252j:plain

 

  一方90後は子供の頃からリスク社会に嫌気がさし、自分の趣味の世界に引きこもるようになる。経済力も上がった彼らは、彼らに人気の日本のサブカル等に消費を向ける。世間には「90後」という塊で注目される一方、オーディション番組で「僕は90後じゃない。僕は僕だ」と言った同世代が支持された。例えるなら「銀魂」。

 

f:id:kikibrero:20171029232301j:plain

 

 95後、00後も中国のリスク社会を認識する一方、多くのIT企業の成功やネットスターなど、自力で成功してきた人々の姿を見たことで「社会にはリスクより多くのチャンスがある」という考えを持つようになった。転職も当たり前で開放的に色々な人と関わろうとする、日本的に言えば「意識が高い」人が多い。イーロンマスクが人気らしい。

 

f:id:kikibrero:20171029232305j:plain

 

 インターネットとの関係も80後から00後で大きく異なる。80後にとってネットは、自分たちの世代の趣味に逃げられる唯一の場所だった。90後の時代には、自分たちの趣味が実世界でも受け入れられるようになってきた。95後00後の時代には、彼らの文化こそが中国文化のメインストリームになった。

  中国の若者に大きな影響を与えてきた日本のサブカルだが、その立ち位置も変わりつつある。多くの80後、90後にとって、日本のサブカルは青春そのものだった。一方00後にとって日本のサブカルは、欧米や国産の文化を含む娯楽の一部に過ぎない。また彼らは前世代に比べて創造的で、今後10年の文化の担い手は彼らになるだろう。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 まとめは以上です。

 激動の社会に生きる中国では、世代間の意識も大きく差がある一方、上の世代の若者への期待度も大きく、仕事面でも若者に大きく権限を与えているようです。また、今は影響力の大きい日本のサブカルですが、世代間の意識の変化を掴まなければ一気に求心力が起きる危うさも感じました。